news
最新情報最新情報
2026.10.20
第6回ランチタイムセミナー レポート
2026年9月4日(金)、第6回ランチタイムセミナー「デジタルヒューマニティーズと考古学:衛星画像で探る砂漠の景観」を、Idea Stoa(名古屋大学共創スタジオ)にてハイブリッド形式で開催しました。会場11名、オンライン28名、計39名の方にご参加いただきました。
講師には、名古屋大学高等研究院/本センターのサラ・ザイア博士と、イタリア国立研究会議(CNR)バイオエコノミー研究所のフェデリコ・カロテヌート博士をお迎えしました。講演は英語で行われ、日本語・英語のAIリアルタイム翻訳を併用しました。

GISと空間モデリングによる古代交易路の復元について講演するザイア博士
ザイア博士は「Reconstructing Ancient Desert Networks: GIS and Spatial Modeling in Egyptian Archaeology(古代砂漠ネットワークの再構築:エジプト考古学におけるGISと空間モデリング)」と題し、古代エジプトと「神々の土地」プントを結んだ交易路の研究を紹介しました。地形や水源の情報、碑文・パピルスなどの文献、古代船の復元航海による実験考古学のデータをGISに統合し、移動にかかる時間をもとに最も効率的な陸路と海上の停泊地を推定する手法が示されました。あわせて、こうした理論上のモデルを衛星画像と機械学習によって現地で検証し、砂漠の遺跡を保護することを目指す「SANDプロジェクト」の構想が紹介されました。

衛星データを用いた遺跡の検出とリスク評価について講演するカロテヌート博士
続いてカロテヌート博士は「ESA Satellite Datasets and Their Applications for Cultural Heritage and Environmental Analysis(ESA衛星データセットと文化遺産・環境分析への応用)」と題し、「宇宙から遺跡は見えるのか」という問いから講演を始めました。高解像度の衛星画像に写るローマ時代の要塞やケルン(積石塚)を示しながら、機械学習による遺跡の自動検出、異なる時期の画像を比較して盗掘や開発による損傷を把握する手法、さらに気候変動で増える鉄砲水(フラッシュフラッド)から遺跡を守るためのリスク評価について解説しました。
後半の質疑応答では、会場とオンラインの双方から、分野を越えた質問が相次ぎました。経済学で用いられる空間統計の指標(LISA)を遺跡検出にどう生かすのか、衛星のレーダーは地中をどこまで見通せるのか、といった手法に関する質問のほか、日本考古学の研究者からは「文献で知られている交易路を、あえてシミュレーションで復元する意義は何か」という問いが日本語で投げかけられました。ザイア博士は、広大な砂漠を踏査だけで網羅することはできず、モデルが有望な地点を絞り込むことで現地調査を効率化できると応じました。このほか、遺跡の年代の決め方や、機械学習に用いる訓練データの規模についても議論が交わされました。

当日の会場の様子
司会・オーガナイザー:須田永遠(名古屋大学デジタル人文社会科学研究推進センター)
ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。